
「これ、いつか使うかもしれないから」「思い出だから捨てられない」
そんな気持ち、ありますよね。
一方で、「それって本当に必要?」「どうしてそのまま放置してるの?」
と感じてしまう自分もいて——
“片付けられない人”と“すぐ捨てる人”の間には、深い価値観の違いがあるように思います。
今回は、心理学の視点からこのすれ違いを紐解くために、
「保管型」と「断捨離型」という2つの片付けスタイルを紹介しながら、
それぞれの背景にある心の動きについて、やさしく考えていきます。
■ 断捨離型の心理|“曖昧さ”が落ち着かない理由
● 認知的閉鎖欲求(Need for Cognitive Closure)
人は誰しも、「物事をはっきりさせたい」「白黒をつけたい」という欲求を持っています。
この欲求が強い人は、未整理な情報や物にストレスを感じやすく、
- 「これは誰の物?」「なぜここにあるの?」と意味づけしたくなり
- 中途半端な状態や“保留”が苦手です
このような性格傾向は、心理学では「認知的閉鎖欲求」と呼ばれています。
いわゆる「断捨離型」の人は、
片付けを「空間を整える行為」以上に、
“心を整えるための知的な整理”として行っているのです。
片付けの理論を深めたい方は
■ 保管型の心理|物の中に“気持ち”があるから手放せない
逆に、物を手放すことに慎重な人もいます。
何年も使っていないのに捨てられない、ぐしゃっとした包装紙も捨てずに取っておく。
それらは、ただの物ではなく、「気持ちのかけら」や「自己肯定感の拠り所」であることも。
このような行動には、心理学でいう「認知的不協和(Cognitive Dissonance)」が関係しています。
● 認知的不協和とは?
人は、自分の気持ちと行動が矛盾しているときに、
不快感を避けるために“理由づけ”をして心のバランスを取ろうとする性質があります。
例:
- 「これは大事」→ でも使っていない → 「でも思い出だから」
- 「もう使わないかも」→ でも捨てられない → 「また必要になるかもしれない」
いわゆる「保管型」の人は、こうした心のバランスをとりながら、
物を通じて過去や感情とつながり続けているのです。
■ “すれ違い”は、優しさの方向性の違いかもしれない
- 断捨離型の人は、「空間をすっきり保つこと」で安心を得るタイプ
- 保管型の人は、「物をそばに置くこと」で安心を感じるタイプ
どちらも、自分の心を守るためのやり方が違うだけ。
お互いに「なぜそれを手放すの?」「なぜそれを残すの?」と疑問に思うこともあるけれど、
その背景には、ちゃんと大切にしている何かがあるんです。
■ 心をすっきりさせる片付けのヒント:タイプを知って向き合う
● 断捨離型ができること
- 「捨てよう」ではなく「これは今も必要?」と問いかけてみる
- 感情より“目的”を共有する(例:「この引き出しを使えるようにしたい」)
● 保管型ができること
- 「なぜ残しているのか」を言葉にしてみる
→ 本当に残したい物が自然と見えてくる - 「一時保留BOX」を作って、すぐに決めなくてもいい空間を用意する
■ 片付けのあとは、“整った空間で心を癒す時間”も
片付けが終わった後に、ふっと力を抜く時間も大切です。
リセットされた空間で深呼吸できるような、
香りや温度を通して心を整えるアイテムも取り入れてみては。
忙しない日々の中で、「整える→くつろぐ」までが、片付けの本当のゴールかもしれません。
■ 最後に:片付けは、物だけでなく“気持ちの対話”でもある
散らかった空間には、
まだ整理できていない感情や、向き合いきれていない思い出が宿っていることがあります。
だからこそ、「片付けよう」という行為には、
曖昧さに向き合う勇気と、相手の心を尊重するやさしさが必要なんです。
片付けとは、物を捨てることではなく——
“どんな生き方をしたいか”を選び取ることなのかもしれません。



